明日の地方創生を考える
(
一般財団法人 土地総合研究所 )
◆本格的な人口減少時代が到来する中、持続的な地域づくりをどのように行うべきか? 新聞等に毎日のように地方創生の文字が踊り、目的も効果もあまり精査された形跡なしに、次々と関連予算が雪崩現象のように決まっていくのを見ると、腰を据えた議論が必要だ。しかし国の国土形成計画構想をみると、従来型の国土の均衡ある発展論を必ずしも抜け出せていないのが実情だ。今の都道府県が毎年一つずつ消滅するほどの本格的な人口減少時代が到来する中で、低生産性労働に依存した地域中小産業の新陳代謝を促進し、高付加価値生産性を備えた地域産業への脱皮を図りながら、「まち・ひと・しごと」がホリスティックに連携・融合した息の長い地道で持続的な取り組みにより、域内循環に優れた地域づくりへの道筋をいかにつけることができるか――そのような背景に立って、行政、法律、経済、社会学などの各分野の有識者が、真の地方創生について提言する。
目次
はじめに──明日の地方創生を考える
第1部 明日の地方創生を考える
1-1 地方創生と土地利用法制
東北大学名誉教授 生田長人
1 はじめに
2 現行土地利用法制の時代遅れな性格と特徴
3 地方創生の視点から機能する土地法制改善の方向
4 土地利用法制の枠組み法化……都市計画法を例に
5 都市域と農山村域の連携のための法制
6 管理のための法制度の整備
1-2 地方創生を考える
政策研究大学院大学教授 井堀利宏
1 アベノミクスから地方創生へ
2 人口減少の衝撃
3 地方創生の考え方
4 再分配政策:簡単な数値例
5 Uターン現象の効果
6 地域間再分配政策の評価
7 地方創生と中央政府の望ましい関与
1-3 地方創生を支える都市・農村空間のあり方 「コンパクト」シティから「サステナブル」シティへ
東北大学大学院工学研究科准教授 姥浦道生
1 はじめに
2 国の空間形成戦略「コンパクト+ネットワーク」
3 コンパクトシティ論とそれに対する批判
4 実践的計画事例
5 成熟時代の都市・農漁村空間形成のための3つの基本的視点
6 地方創生に資する成熟時代の都市・農村空間
1-4 縮小時代の国土政策 地方創生の課題と展望
豊橋技術科学大学学長・日本学術会議会長・東京大学名誉教授 大西隆
1 国土政策の構成と発展
2 国土政策の変化
3 縮小時代
4 人口減少社会と適応,緩和,格差是正
5 地方における仕事の発掘
1-5 地方創生を考える
慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授 小幡績
1-6 若者にかかる地方の未来
東京大学社会科学研究所教授 玄田有史
1 地方から都会へ
2 高学歴・大企業神話
3 将来に希望を失う若者たち
4 地方にこそチャンス
5 地方には仕事がない?
6 一度は出てみる
7 「手応え」のストーリー
8 大切なのは「準備」
1-7 情報化とグローバル化の大奔流を地方創生にどう活かすか ネットと結びついたインバウンド消費とふるさと納税の取り組み事例
九州大学大学院経済学研究院教授 篠﨑彰彦
1 はじめに
2 地方を取り巻く環境の大変化は何か
3 訪日外国人旅行者の急増をどう活かすか
4 ネットの威力と結びついたふるさと納税の活用
5 おわりに
1-8 結婚市場としての東京 少子化対策としての地域政策
日本大学経済学部教授 中川雅之
1 はじめに
2 結婚に関連する地域選択のモデル
3 結婚関連行動の地域選択を決定する要因
4 結婚市場としての東京都
5 結婚市場でのミスマッチの発生
6 都市と地方の未婚男女比率
7 まとめ補論 Gautier,SvarerandTeulings(2010)のモデル
1-9 地方創生に求められる地域経済構造分析
岡山大学大学院社会文化科学研究科・経済学部教授 中村良平
1 はじめに
2 東京集中現象
3 地域経済の三面非等価
4 地域経済構造分析の必要性
5 稼ぐ力と雇用吸収力(地域経済構造分析Ⅲ)
6 宮崎県都城市の例
7 連関と循環(地域経済構造分析Ⅳ)
8 移出と循環の必要性
9 高齢化社会・コンパクトシティへの応用
10 小国の仮定と産業連関表の意義
11 連携中枢都市圏の考え
12 連携都市構想の経済的便益
13 おわりに──地域経済循環を重視した施策
1-10 地方創生の「小さな拠点」政策を考える 中山間地域等と人口減少対策について
島根大学名誉教授 保母武彦
1 はじめに
2 「小さな拠点」の舞台・中山間地域の位置
3 「小さな拠点」づくりとは何か
4 「集落」,地縁的共同体の役割
5 地縁共同体と集落自治──高知県大月町
6 「集落点検・集落計画」による個別集落の再生──島根県旧柿木村
7 昔の村単位の「地域自主組織」──島根県雲南海潮地区振興会
8 まとめにかえて
1-11 人口減少社会と地域金融機関経営
関西外国語大学教授・九州大学名誉教授 堀江康
1 はじめに
2 人口減少と金融機関へのインパクト
3 金融機関のタイプ別動向
4 信金・信組の店舗戦略とその効果
5 地域金融システムの課題
1-12 明日の地方創生を考える
北海道大学法学研究科教授 宮脇淳
1 はじめに
2 地方創生政策の経緯と特性
3 合成の誤謬と整合性問題
4 新しい国土形成計画の視点
5 地方創生政策の求められる本質
1-13 都市集中のメカニズムと地方創生の問題点
日本大学経済学部教授 山崎福寿
1 はじめに
2 日本創成会議とアリゾナ効果
3 都市と計画
4 都市集積の原因
5 都市と地方の格差
6 おわりに
1-14 地方創生に欠けている大きな視点
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 山下一仁
1 はじめに
2 地域創生は必要なのか──二つの本音
3 成功した日本の地域振興政策
4 機能しなくなった旧政策に代わる新政策
5 新たな難題と対策
6 終わりに
1-15 エリアマネジメントと定期借地権による土地所有権と土地利用権との分離 高松丸亀町商店街の事例を素材として
早稲田大学大学院法務研究科教授 吉田克己
1 はじめに
2 高松丸亀町商店街の概要とその再生への途
3 土地所有権と土地利用権との分離
4 おわりに
第2部 データで見る地方の現状
2-1 都道府県別資本の生産力効果
一般財団法人土地総合研究所主任研究員 大越利之
1 はじめに
2 地域間の経済格差
3 社会資本の生産力効果
4 おわりに
補論1 データについて
補論2 生産関数の推計
2-2 地図を通して見る市町村の現況
一般財団法人土地総合研究所研究員 白川慧一
1 はじめに
2 市町村別データを示した地図
3 市町村の現況を理解する上での3つの論点
参考 地域経済分析システム(RESAS)
2-3 市町村の人口増減の構造
一般財団法人土地総合研究所元・調査部長 渡辺直行
1 市町村の人口増加率
2 拠都と人口増加率