京都精華大学生通り魔殺人事件（後編）
京都精華大学生通り魔殺人事件は、2007年（平成19年）1月15日に京都市左京区で発生した殺人事件。犯人は検挙されておらず、2018年現在も未解決。
2007年12月20日、ABC朝日放送の『ムーブ！』で取り上げられました。
出演……大谷昭宏（ジャーナリスト）、堀江政生アナ（朝日放送）、関根友実アナ（朝日放送）、宮崎哲弥（評論家）
《堀江》 ……疑ったんですけれども、ここじゃ無いんじゃないかと思うくらい場所が変わってました。
《大谷》 みたいですね。
《堀江》 まだ１年経っていない状況なんですけども、現場にもう集合住宅が建っていたんですね。周りの田畑はそのままなんですが,、あの畑だけが全部埋めてしまった状態になって跡形も無かった。
あの場所には複数の靴の跡があって、“中国製のウォーキングシューズ”とか、あるいは“外国製の軽登山靴”と呼ばれるようなもの……こういったものの足跡があった。これは唯一の物証ですよね？
《堀江》 こういった重要な手掛かりは、もういいっていう事なんでしょうか？
《大谷》 これはいわゆる下足痕※ってやつですけれど……※下足痕（げそこん）……現場に残された足跡のこと。警察用語。
《大谷》 これはもうキチンと足形はとってますし、それとやっぱり大量消費、大量生産の時代で……例えば、世田谷の一家４人事件※なんかも下足（げそ）が出てるんですね。でも、なかなか犯人逮捕には結びつかない。※世田谷の一家４人事件……2000年に起きた「世田谷一家殺害事件」のこと。世田谷区の住宅に住む一家４人が殺害された事件。犯行現場からは足跡の他、数多くの遺留品が残っていたが、犯人の特定・逮捕には至っておらず、未解決事件となっている。
《大谷》 むしろこれは犯人が捕まった時に、「お前はどこで接触して、この畑のどこに逃げ回って、どういう形で追っかけたのか」とか、そういう検証……引き廻した上での検証がやりにくくなるだろう。
《大谷》 （検証をやるんなら）それは、同じような土地を探し出してきて、当時の写真をもとにして下足の跡を置いて、それで検証しなきゃいけない。
《大谷》 やっぱり地権者も現場となった事にだいぶショックな上に、「（現場の土地を）そのまま残しとけ」というのも、なかなか難しいんで……私たちからすると「ああ、事件というのはこうやって風化していくのかな」と、そういう思いは残りますけどね。
おそらく堀江さんも、そんな思いだったと思うんですけども。
《堀江》 でも、もうある意味仕方がないし……それだけ時間が経過してもまだ犯人が逮捕されていない事こそ、怒らなきゃいけないですよね。
《大谷》 おっしゃる通りですね。
《堀江》 改めて現場に行って感じたことなんですけれども。
《堀江》 その歩道なんですけれども、思ったほど狭くはなかった。自転車２台ぐらいは、すれ違えるところであったという風に思いました。
《堀江》 そして、かなり広範囲にわたって、19カ所も刺しているという追い回しがあった場所なんですが、こういうことから“執拗な殺意”というものを感じるわけなんです。
《堀江》 さらに大谷さんは、「金銭が盗まれてない」、「千葉さんの通学路である事を知ってた可能性がある」、そして「刃物をすでに持っていた、携帯していた」……ということを考えると、ここからも“恨みによる犯行”等ではないか、という事ですね。
《大谷》 その歩道を見るとね、正面切ってぶつかり合って「オラどけよ」とか「お前からどけ」とか「何やってんだ」と言って喧嘩になるような狭さじゃないですよね。
《大谷》 避けて行っても、ひょっとしたら接触くらいはするかもしれない（けど）。
《大谷》 それを19箇所も刺す必要があるのか。たかがそれ位の事で「アホ、ボケ、この野郎」って（ナイフを）振り回す程のことがあるのか。
そもそも、たまたまその日に自転車でトラブルが起きると思ってナイフを持っていた、というのは考えられない。
《堀江》 そうですね。
《大谷》 今は護身用に若い人が持つケースはありますけども、そんな19カ所も刺して相手を殺すような（気で）刃物を持って歩くというのは、いささか常軌を逸してるんじゃないか。
《大谷》 そのぐらいのことで「アホ、ボケ」ってあれほど追い回す必要があるのかな、という感じがするんですね。
《関根》 よほどの恨みを感じる、と。
《堀江》 さらに不可解なことがあります。
《関根》 実は犯行直後、現場にしゃがみ込む男の姿が目撃されているんですね。目撃した人はそのまま通り過ぎましたが、30秒経って「やっぱりおかしい」と戻ってきたら、その男の人はもう居なかったということなんですね。
ですからこの間に居なくなったということは、“土地勘のある近所の人物”なのではないか、と。近所の住宅街に潜り込んだのではないかと見られていました。
《堀江》 これを踏まえて大谷さんは、「警察の見立てを総合していくと、“キレやすい近所の男”ということになる。それならもう地取りの捜査※であがっているはずだ。あがっていないんだから、ちょっと違うんじゃないかという事を考えた方がいい」と。※地取り捜査……地域を決めて行う、犯罪事件の聞き込み捜査。
《大谷》 そうですね。これが（地取り捜査で）出てこないというのはね、たまたまこの「キレやすい男」は今年の１月15日だけ、こういうトラブルを起こしたのか。
《堀江》 その後、似たような事は近所では起きてない訳ですよね。
《大谷》 その前にも無い、ということであればね。この日１回だけって言うんであれば、これは相手（千葉君）と何かあったんでしょう、と思わざるを得ないですね。
《堀江》 京都府警の初動捜査ってのはどうなってますかね。
《関根》 初動捜査の規模を見て頂きたいんですが。
75人体制で初動捜査は行われました。京都府警は4.5平方キロメートルに及ぶこの地域を徹底的に捜査したということなんですね。
京都精華大学、そして３つの駅を含むこのエリアを捜査しました。
《関根》 現在までの情報提供は194件にのぼり、聞き込みは80％完了しているということなんですね。
《堀江》 ここまでしても出てこない。
《大谷》 そうですね。
《大谷》 私は当初から、逃げた範囲から行けばこのくらいの範囲でいいんじゃないかな、という感じはする訳です。近場だとすればね。
《大谷》 しかし１年近く経っても出てこない。
《大谷》 これだけ聞き込みすればですね……しかも似顔絵が出来てる訳ですよね。これだけ皆さんが知ってくれてる事件な訳ですよ。そういえば……という話が、出てきてもおかしくはない（はず）。
《堀江》 なんでしょう宮崎さん？
《宮崎》 経験の深い社会部記者、事件記者の大谷さんに、こういうこと言うのはおこがましいんですけど……。
《大谷》 いえいえ（笑）
《宮崎》 じゃあ例えば片識（かたじき）としてもね、被害者の身辺、人間関係（の捜査）っていうのやって無い訳ですか？ やってる訳ですよね。
《大谷》 やってると思います。
《宮崎》 でも、そこでも浮かび上がっていない訳だから……。
《大谷》 だから最初に申し上げたようにですね、例えばサークルの中で、あるいは学校の中で自分（犯人）が好きな女の子がいる。その子には全然自分では声が掛けられない。けど、たまたま彼（千葉君）は非常に性格の良い、皆から好かれる人間ですから……
《関根》 恨まれる人物ではない、とみんな口を揃えて……。
《大谷》 ……そうやって（千葉君は）みんなで仲良くしてて、（でも）自分はそこに入っていけない、と。そういう事だけで今は、事件やっちゃう奴が山ほどいるんですよ。
《関根》 （殺意が）ふつふつと……。
《大谷》 ふつふつと。
《大谷》 「なんでだ」と。じゃあ、直接お前「仲間入れてくれよ」と言やいいじゃないかと思うんですが。
《大谷》 だから（千葉君）本人が、誰かと喧嘩したとか、誰か特定の女性と付き合ったとか、そういうことであればまだ捜査がしやすいんですが。そこら辺のところの事件じゃないかなと思うんですよ。
《堀江》 この現場の様子が変わっていく中で描かれました、この漫画なんですが……
《堀江》 この事件を忘れないでほしいという思いもある。そして何よりも、なんとか解決したいという仲間の想いが詰まった漫画なんですね。
《関根ナレーション》 事件当日、大学を出る千葉さんの元気の姿……。
《テロップ》 “マンガで伝える”恩師・仲間の想い
《テロップ》 京都精華大学マンガ学部講師（46）
《マンガ学部講師》 自分たちで何か出来ることはないか、と。
《マンガ学部講師》 まあ普通考えるビラ配りとかなんですけども、千葉君との出会いもやっぱり漫画を通してってことですから……
《マンガ学部講師》 漫画で何かできれば、やっぱり千葉君も喜んでくれるんじゃないかな、と思ったんですね。
《テロップ》 大学内で募金活動 マンガ冊子1000冊作成
《関根ナレーション》 大学内で募金を募り、マンガ学部の恩師や仲間が協力して作り上げた漫画の冊子。
《関根ナレーション》 そこに描かれていたのは、事件の経緯だけではありませんでした。
《関根ナレーション》 〝大作くんからただよう温厚なオーラ〟
《関根ナレーション》 〝大作くんについて語るとき、みな大作くんの目になってしまう〟
《マンガ学部講師》 やっぱり千葉君っていうのは本当に、全然争いとかに巻き込まれるようなタイプの人間ではなかったですし……
《マンガ学部講師》 そういう人柄をやっぱり知っていただきたい。
《テロップ》 今月13日・14日 1000冊のマンガを配り情報提供を呼びかけた
《関根ナレーション》 思いを込めて今月、千冊の冊子を配り歩きました。
《テロップ》 犯人はどこにいるのかわからないので全国の人に見ていただきたい
《マンガ学部講師・声》 犯人はどこに逃げているかわかりませんから……
《マンガ学部講師》 やっぱり全国の人にも読んで頂きたいたいな、と思って。
《関根ナレーション》 最後のページはこう締めくくられていました。
《関根ナレーション》 「皆さんの周りに犯人が潜んでいるかもしれない」「犯人を見つけるのは、あなたなのです」
《堀江》 これまで何人か不審な人物上がった、と言うことなんですけれども、「容疑なし」という形になっています。
解決に至る日は来るんでしょうか。大谷さんは、
《堀江》 「住民らの記憶が薄れないうちに捜査の範囲を広げ、片識（かたじき）の男の線で捜査すべきである」と。
《大谷》 この大作君って、お母さん一人で大事に、大事に育てられた。
で、本当に……ね、考えてみると、こうやって友達が千冊も漫画を作ってくれて……
《大谷》 彼の（事件の）犯人を探してくれると。
《大谷》 今まで私たちは恨みっていうと、何かお互いの恨み合いみたいのがあると思ってる。
《大谷》 ただ、今どきの事件の恨みというのは、そういう怨恨ではなくて、みんなからすごく好かれている……
《大谷》 女の子の友達がいっぱいいる、サークルの中でも人気者だと……。
《関根》 そこに対する嫉妬も……。
《大谷》 そういうことも恨みの対象になるんですよ、ということを今の警察組織の中でね……
《大谷》 「（被害者は）すごくいいヤツでみんなから好かれてて、恨みなんか買うことのない子だよ」と言われたときに、「だから恨みを買ってるかもしれないな」という所まで考えて捜査の範囲を広げないと……いまの事件は難しい。特に若い人の事件は難しいんじゃないかなと。
《大谷》 そういう事も、ちょっと頭の隅っこに入れて捜査していただければな、というのがこの事件に対する私の感覚ですね。
《堀江》 この漫画冊子の背表紙（※実際は裏表紙）のところに、こういう風な呼びかけがあります。
《関根》 はい。
《関根》 小さな事でも気になることがあったらお電話ください、と情報提供を呼び掛けています。
《関根》 何か思い当たる点がありましたら是非こちらの方にご連絡ください。
《マンガ冊子》 情報提供は京都府警捜査本部（下鴨署）075-703-0110 0120-230-663（フリーダイヤル）
《大谷》 周りの方々が「そういうば」って事がちょっとでも気が付いたら、言って頂けたら、ひょっとしたら解決の糸口になる様な気がします。
《堀江・関根》 ありがとうございました。
《堀江》 この後は関西オンリーワン企業です。
《関根》 年賀状や書き初めに欠かせない「墨」。
《関根》 この墨のトップメーカーにヤマケンさんが迫ります。
《サイドスーパー》 ＣＭのあとは…墨を作り続けて200年！老舗 成功の秘訣とは？